戌の日と安産祈願はいつするの?
商売繁盛、学業成就、恋愛成就などなど…神社に行くと色んなお願い事をしますが、その中に安産祈願というものがあります。「無事にお産ができますように。元気な子が生まれますように」とお願いをすることですが、この安産祈願に最適な日というものがあります。
それが『戌の日(いぬのひ)』です。
戌の日は具体的に何をするのか、いつなのか、どこの神社が有名なのかをご紹介して行きましょう。
1)そもそも戌の日って何?
『戌の日の安産祈願』とは妊婦が妊娠5か月目の戌の日に、腹帯を締めて神社で安産を祈願することです。先述しましたが、これは日本にしかない文化で、海外には腹帯を締めるという風習も戌の日にあたるような日もありません。昔は祖母から母へ、と受け継がれてきた腹帯を締めるのが習わしでしたが、現在はお参り当日に神社で購入したり、事前に量販店や通販で自分の体に合った腹帯を購入するのが主流になっています。
そもそも、なんで5か月目にわざわざ安産祈願をするのかと言うと、妊娠5か月となると悪阻(つわり)の症状も落ち着いてきて、胎児もある程度成長して安定してきます。(個人差があります)また、『5』という数字がキリが良いというのと、昔は今ほど医療が発達していなかったので妊娠しても5か月目まで無事に育つことが稀でした。健康に生まれて来ることが奇跡、妊婦が健康体で5か月目を迎えるのも奇跡、という時代がかつて日本にはありましたので、そういった意味でも記念すべき5か月目に安産を願ってお参りしたのではないかと言われています。
2)なんで犬なの?
『戌の日』の戌は十二支の戌を表しています。要は、ワンワン鳴くあの犬です。十二支から来てるのは分かるけど、どうして戌の日にわざわざお参りするの?
それは『犬』が安産の象徴だからです。
犬を実際に飼っている、または飼っていた人はなんとなく分かるかもしれませんが、犬ってポンポン産みます。お産が軽くたくさん産む動物なのです。犬のそういったお産の習性にあやかって、日本ではお参りをするようになったわけです。
犬と同じようにお産が軽くて十二支に入っている動物でネズミがいますが、ネズミは確かにお産が軽くてたくさん産みますが…お母さんネズミが子ネズミを食べちゃったりすることがありますからね。ちょっと縁起が悪いですね。比べてみると、やっぱり犬の方がありがたい感じがします。
3)戌の日はいつ?
日本の暦はすべてに十二支があてがわれています。戌が十二支の11番目にあたり、12日に一度めぐってきます。妊娠5か月の期間なら、一か月の間に2回か3回は戌の日を迎える事ができます。
2016年9月以降の戌の日が以下のようになっています。
9月…1日(木)、13日(火)、 25日(日)
10月…7日(金)、19日 (水)、31日(月)
11月…12日(土)、24日(木)
12月…6日(火)、18 日(日) 30日(金)
4)安産祈願で有名な神社
戌の日のお参りは基本的にどんな神社で行っても大丈夫ですが、折角なのだから安産祈願で有名な神社にお参りしたいですね。
そういった神社は全国にたくさんありますが、今回は有名どころの3か所をご紹介します。
・塩竃神社(宮城県塩釜市)
宮城県塩釜市に古くからある由緒ある神社です。地元では「しおがま様」と呼ばれ親しまれています。港町にある神社名だけあって、ご祭神の塩土老翁神(しおつちおじのかみ)は海や
塩を神格化させた神と言われています。しかしこの神様は航海安全のご利益だけでなく、安産の神様としても崇められるようになりました。恐らく、海の潮の満ち引きが生と死を司る思想からこのような変遷を辿ったのでしょう。宮城県で安産祈願をするなら塩竃神社!と呼ばれるほど有名ですが、この神社はとっても長く急な石段(通称、男坂)があります。これは地元の高校野球部が昭和の時代からトレーニングに使うくらいの場所ですので、お参りの際は身体に充分気を付けてお出かけください。
≪塩竃神社へのアクセス≫
電車→JR仙石線本塩釜駅から表参道(表坂)の石鳥居まで徒歩15分
JR東北本線塩釜駅から表参道(表坂)の石鳥居までタクシーで5分
車→三陸自動車道、利府中ICより車で10分。
(駐車場: 境内の東側から北側にかけて参拝者専用の無料駐車場が4か所(第1・第2・第3・バス)があります。300台収容)
・東京水天宮(東京都日本橋)
東京のオフィス街のど真ん中にある、安産祈願で全国的にも有名な神社です。社が建てられたのは文政(ぶんせい)元年(1818年)と割と最近です。総本宮は福岡県久留米市にあり、久留米の鎮守様として祀られてきました。元々は久留米藩主である有馬家の屋敷内に建てられてましたが、人々の信仰が厚く塀越しに賽銭を投げる人が後を絶たず、時の藩主は毎月5日に限りお屋敷を解放し、町民のお参りを許したという話が残っています。このことから、有馬家を「情け深い」ことに掛けて『なさけありまの水天宮』という洒落が江戸っ子たちの流行語になりました。
有馬家の屋敷から日本橋に社が移されたのは、明治5年になってのことです。
ちなみにご祭神は「天御中主大神(あめのみなかぬしのおおかみ)」「安徳天皇(あんとくてんのう)」「健礼門院(けんれいもんいん)」「二位の尼(にいのあま)」です。
天御中主大神は日本の祖先神であり、安産や子宝など色んなご利益をくださる神様ですが、他のご祭神は『平家物語』に登場した人物たちです。
こちらの水天宮は、2016年に新しくなりかなり近代的な建物に生まれ変わりました。休日の戌の日は非常に混雑しますので、お参りの際はお気を付けください。
≪東京水天宮へのアクセス≫
電車→東京メトロ半蔵門線 水天宮前駅(5番出口)より徒歩1分
東京メトロ日比谷線 人形町駅(A1出口)より徒歩6分
都営地下鉄浅草線 人形町駅(A3出口)より徒歩8分
都営地下鉄新宿線 浜町駅(A2出口)より徒歩12分
車→首都高箱崎ICを下りて約5分
(有料駐車場: 境内の1階部分にあります。最大40台)
・諏訪大社(長野県諏訪市)
巨大な注連縄と御柱祭(おんばしらまつり)で有名な諏訪大社ですが、安産祈願の神社としても有名です。諏訪湖を挟んで二宮四社の境内が鎮座しており、上社は諏訪湖の南岸、下社は諏訪湖の北岸に位置します。冬になると諏訪湖が凍り、放射冷却によって凍った湖面が盛り上がって亀裂が走る現象が起こります。これを「御神渡り(おみわたり)」と言い、上社の男の神様が下社にいる女の神様(妻)に会いに行っているのだと昔から伝えられています。
それはさておき、諏訪大社の安産祈願は下社でも上社でも受け付けていますが、下社秋宮でお参りするのが良いでしょう。下社に祀られているのは女の神様ですし、何より下社秋宮の奥に行くと「子安社」という小さな社があります。そこに底の抜けた柄杓(ひしゃく)をお供えするのが、諏訪大社の安産祈願の醍醐味です。
なぜ底抜けの柄杓を供えるかと言うと、「水がつかえず軽くが抜けるが如く楽にお産ができる」という意味を持っているからです。
御祈祷の後は、柄杓を購入し、出産予定日や両親の名前を書いて奉納してみましょう。
≪諏訪大社(下社秋宮)へのアクセス≫
電車→JR下諏訪駅から徒歩約10分(秋宮まで)
車→長野道岡谷ICから国道20号経由約15分
中央道諏訪ICから国道20号経由約20分
(駐車場: 無料駐車場あり。普通車80台分)
5)戌の日まとめ
『戌の日』についてご紹介してきましたが、いかがでしたか?近年では産婦人科でも「来月は戌の日のお参りですね」と教えてくれるところが多いので、妊娠した女性の約5割は安産祈願に出掛けるそうです。
実は筆者も8月に東京水天宮まで安産祈願をしてきましたが、土曜日の戌の日でしたのでディズニーランドのような混雑の中で御祈祷をしました。とても近代的でモダンな建物だったことにも驚きましたが、待合室の大きさや祈祷所の広さと受付の立派さに目を奪われていました。混雑している時は付き添いの家族は祈祷所に入れず、妊婦さんだけしか入れません。20名くらいずつ順番に祈祷を行い、御神酒やお守りを頂いて帰りました。時間にして1時間あるかないかだったので、本当にあっという間でした。戌の日のお守りは可愛いまるっこい犬のストラップのようなものですが、実は筆者…ずっとこれを猫だと思っていました。
実家にも同じものが置いてあって、子供の頃からずっと猫だと思ったまま育ってきました。犬だと知って衝撃を受けたのが、戌の日一番の驚きです。
しかし、安産祈願をするのは非常に良い事ですが、妊娠5か月という時期は人によってまだ悪阻も落ち着かず、体調も安定しないという事もあり得ます。ご自身の体調や都合を考慮し、無理のないスケジュールで安産祈願をしましょう。
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